六章:歯車

第17話

男のアパート。冴子の手料理を目の前にして黙りこくる男。


いつになく暗い表情。キッチンから男を見、冴子は首をかしげる。そして口を開く。




「どうしたの? 風邪でもひいたの? 食欲ない? お昼はもう食べてた?」




男を覗き込む冴子。




「いや、そういうわけじゃないよ」




箸を取りながら男は力なく笑う。




「だったらよかった、今日はスタミナ抜群の焼肉。風邪をひいている人にはちょっと胃もたれしそうよね」




一口肉を口に放る男に




「美味しい?」




と冴子。




笑いながら男の顔を覗き込む。男は焼肉を食べ終えた後、箸を下ろした。うつむいた顔は暗い面持ちだ。

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