五章:二人の愛のカタチ

第15話

男のアパート。二人は寄り添っている。




「あなたの両手と両足が不自由でよかった。だから、私はあなたを独り占めできる」




頬を寄せる二人。




「君の子宮が無くてよかった。だから僕は君を独り占めできる」




男は自由の利かぬ手で冴子の頬をなでようとする。女は男の手の甲を支え、自分の頬に寄せる。




「あなたが、みるからな欠点を持っていてよかった。だから、あなたは私だけのもの」




「君が、みるからな欠点を持っていてよかった。だから、君は僕だけのもの」




そうして二人は軽くキスをする。




「君が君でよかった」




二人はおでこをそっとひっつける。そして笑う。




「あなたがあなたでよかった」




再び唇を寄せる。深く深く口付ける。




二人の間では結婚の機運が高まっていたが、世界は二人に優しくは無く、二人の歯車が徐々に崩れていくことを冴子はまだ知らなかった。

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