一章:LOVEメール
第1話
「どうしたのよ、沈んだ顔して」
と珠代。
「そうそう、それにランチを奢ってくれるなんてどういう風の吹き回し? いつもはキッチリ消費税まで割り勘なのに」
麻美が、パスタを器用にフォークに巻きつけながら言う。
ここは、街中のイタリアンレストラン。地元の主婦が息抜きがてらランチをよく食べに来る、人気のレストランだ。
「なにか相談ごとがあって、私たちを呼んだんでしょ?」
と再び珠代。
珠代のお皿のパスタは既に平らげられ、右端にボンゴレの貝殻が刻みニンニクとともに、いくつも転がっている。ここのアサリはふっくらと大身で、珠代は2回に1回はボンゴレを頼んでいる。
「あのね?」
覗き込む二人の主婦仲間を前に今にも泣き出しそうな顔で花子が口を開く。
「あのね…旦那が浮気をしてるみたいなの!」
「「浮気!?」」
レストラン内に響き渡る二人の声。
「私、パソコン教室に通いだしたって前に言ってたでしょ?」
花子の言葉に、
「ああ、私たちがめんどくさがって行かなかった講習会ね」
と麻美が珠代をちらり振り返る。
「ごめん、私も機械類苦手だから」
珠代もバツが悪そうに首をすくめる。
「でね、この間初めて、電子メールの書き方を勉強して。で、家でメールをしてみたのね。そうしたら」
「「そうしたら?」」
「そうしたら、送られてきたの! 女の人からの浮気メールが!!!」
わななく花子に、目線を交わす麻美と珠代。
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