一章:出会い

第1話

そう、目の前にしゃがみこんでいるセミロングの小可愛い少女。


声をかけるのにおあつらえむき。人々のせわしなく行き交う構内、改札口間際の広いフロアのど真ん中に少女はしゃがみこんでいる。




半袖と長袖の入り混じる六月。その少女はさわやかに水色の長袖シャツをはおり、ミニスカ姿でひとり苦しげにうめいていた。




いや、いくら僕が出会いに飢えていたとしても、サークルや講義仲間に彼女とのいちゃいちゃを散々のろけられ、一人身でいることにすこぶる焦っていたとしても、決してそんなよこしまな下心からじゃない。




僕はその日いたってただの親切心からその少女に声をかけたのだ。




「あの……気分でも悪いんですか? さっきからずっとしゃがみ込んでいるみたいだけど、誰か呼んで来ましょうか?」




「近寄らないでっ!」

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