第16話
フラッシュ旅立ちの日。
ミーナから、二人の2ショット写真にお別れのメッセージをお花畑とハートのカラフルなイラストで飾られたものを渡された。
「絶対私のことを忘れないでね。毎日カミサマにお祈りしとくから。絶対だよ。生きて帰って来てね」
「愛してる」
旅立ちのキスをする二人。
フラッシュが去った後、キッチンの床に両足を投げ出し泣いているミーナ。両手を揃え、鼻先を押さえる。流れる涙。そうして独り言のようにつぶやく。
「だって、フラッシュさんが違う誰かと結婚するなら、私はフラッシュさんを殺すもん。だから、何も変らないの。フラッシュさんがたとえ戦場で死んでも。私を愛してくれないなら、殺しちゃうもん。だから、こうするしかないの」
戦場に男を送る、少女の言葉。ミーナは敢えて空港まで見送りに行かなかった。敢えて二人の住むアパートの玄関先で行ってらっしゃいをした。この一人言と涙をこぼすために。
一方フラッシュは思う。俺は少しだけ嘘をついていたのかもしれないと。高額カメラマンになれないくらいなら、そうしてミーナを失うくらいなら、死んだ方がマシだと。どちらか失うならば死んだ方がマシだと。死んでしまいたいと。
それで、敢えてアフガニスタンというチャンスと危険の織り交ざるモチーフを選んだのだろうと。飛行機で飛びながら。フラッシュは何度か思った。
もしかしたら、穏便に賞への応募にいそしめばよかったのかもしれないと。だけど、一番手っ取り早く、確実な手法、だけどひどく危険な手法を選んだのだ。
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