「お兄ちゃんも辛いのに、自分のことそっちのけで私のこと心配してくれた。嬉しかった…けど、」

嬉しかった、けど……？

碧空が話を止める。

身体を真っ直ぐにして俺と向き合う形になる。真剣な話をするのだと察する。

麻紀の本音は…なんとなくわかっている。

「お兄ちゃん、には…梨絵ちゃんと生まれた娘…菜緒ちゃんを優先してほしかったな、私より。支える人…いるのに…って。」

麻紀が抱いていた本音。

俺は、利樹を亡くして、麻紀も傷付いて…梨絵子も傷ついて、娘が生まれて…

高校1年生でまだ未熟だったとはいえ、一児の父親になったのに…

梨絵子と菜緒を気遣うどころか、麻紀を優先してしまったんだよな、俺は。

後で間違っていたと気づいたけど、その時はもう何もかも遅かった。

麻紀は菜緒を引き取って半年後。

" 玖賀の家に居るのは辛い。

ごめんね、お兄ちゃん。"

そう言って、出て行った麻紀。

母方の妹夫妻の家に。

養子縁組をして、玖賀から出て行った。

俺は、利樹だけではなくて

自分の行動で、麻紀までも失った。

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