第6話

でもさ、妃響が羨ましくもあり憎かった。




俺はできないのに、妃響はできる。


それがなによりも悔しかった。




だから、逃げるように暴走族に入ったのに


妃響は俺のあとをついてきた。





なんでここまでついてくる?って正直

そんな思いもあって冷たく接してた。



いま、思うとほんと、俺はガキだったな。




母さんがいなくなって俺は荒れた。



若頭というプレッシャーから逃げた。



長男という立場から逃げたかった。





全部、現実と向き合いたくなくて逃げた。





そんな俺を妃響は尊敬してたみたいだけど

俺は尊敬に値する人間なんかじゃないんだ。





現実から逃げようとした弱い男なんだ。




なんで、冷たく突き放しても

妃響は俺の傍に居てくれたんだ?



どうしようもなく、荒れてたのに……



なんで?考えてもわからなかった…




俺にとっての妃響の存在と

妃響にとっての俺の存在って


同じ意味だったって思ってて良かった?



唯一無二の存在。それが妃響だったよ。




俺は、妃響の兄貴でよかったと思ってる。



妃響が弟だったから頑張れたんだよ。



嘘かと思うかもしれないけど俺の本当の

気持ち。妃響に沢山救われた。



子供の頃から、中学生、高校生……

辛い時にいつも傍に居てくれた。



その妃響の優しさ、嬉しかったよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る