第94話

『拓望は、笑ってね』


何を言い出すかと思えば。

なんなんだよ。変なの。



『なに、言ってんだか』



『いいから、笑ってよ』



咲美は泣いている。さっきまで

笑っていたのに泣いている。


なんか、変だ。らしくない。




『わかった、約束する』




『10年後の七夕の日ここに来てくれる?』



『あー、でもプロ野球選手に

なってたら難しいかぁ…』



七夕?10年後?確かにプロ野球選手に

なったら難しいなぁなんて思う。



『わたしたちが24歳になった年の

七夕の日!約束忘れないでね!!

プロ野球選手で忙しかったら

諦めるけど!2人の約束だよ』



『わかった、約束する』



涙で濡れた咲美の横顔。


10年後の理由は俺にはわからない。


だけど約束はまもりたい。

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