第74話

side 瑠威



咲美愛が居なくなって3カ月ほどたった。



あの日から家の中の光が

消えた。咲美愛が居ないからだ。


時々ぶらりと帰ってきては

おばあちゃんの家へと帰る。



野球の練習でクタクタになって

帰ってくる。もういますぐにでも

横になりたい気分だ。



『ただいま〜』


あれ、咲美愛の靴がある。

帰ってきてるんだ。



『おかえり、瑠威』


咲美愛がいる。なんか久々だ。



『ねぇ、瑠威』


『なに?』



『お姫様は旅をしたいな』



………は?旅?たび?足袋?



『ねぇ瑠威、お姫様は旅をしたいんだよ』



ソファーに座っていた拓望が言う。


『こいつ、可笑しいから。相手

しなくていいぞ。バカがうつる』



『頭おかしくなったのか。』



『瑠威は連れて行ってくれる?』



可笑しい。変だ。咲美愛じゃない。

なにがあったというんだ。



『瑠威は優しいもんね』



いつもと違う咲美愛に

違和感を感じる。


なんだか、怖い。

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