第63話

『それでも譲りたくない。』



『裕貴、お願い』



そこへ拓望がやってくる。

こいつ盗み聞きしてたな。



『譲るってなに!咲美は俺の妹だよ?

ものをあげるみたいに言うなよ!』


『おい!どういうことだよ!』



拓望、ごめんな。本当はお前の

妹なんかじゃないんだよ。


父さんの妹なんだよ。


拓望にとっては叔母さんなんだ。



2人が生まれてからずっと隠して

きた真実。誰にも言うわけには

いかないんだ。


ごめんな、ごめん。



『なんでだよ!父さんのせいだ!

あのときあんなに言うから!』



そうだ。俺が悪いんだ。必要以上に

厳しく接してしまったから俺は咲美に

嫌われてしまったんだよ。


大切に育てるの意味を間違えて

いたのかな。そうしたらこんなことに

ならなかったはずなのに。


もう、後悔しても遅い。



咲美愛、また花が咲いたように

笑ってくれますか?

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