話し合い

第61話

side 裕貴



咲美愛が帰ってこなくなった。


あの日からもう1週間がたった。



おばあちゃんの家に行っても

会いたくないの一点張り。


顔もみることができてない。



そんなある日のことだった。


母さんの姉夫妻とおばあちゃん

おじいちゃんが家にやってきた。



咲美愛のことだろうと、俺は

拓望と瑠威と海那星に2階に行って

なさい。ここには来ちゃダメだ。


と言って、2階へ上がらせた。



『咲美愛は?』



奈保美おばさんが俺に言う。


『単刀直入に言う。咲美ちゃんを

引き取らせて欲しい。』



あまりにも予想外の言葉だった。



『ちょっと情緒不安定でね。』


『引き取るっていう言っても

名字は変えないわ。』


『お願い、裕貴くん』



頭が真っ白だ。なんで、どうして

些細な言い合いのはずじゃないのか?


何が間違っていたんだ?



声を絞り出す。


『咲美はあの事を知っているんですか?』



奈保美おばさんの旦那が言う。



『それは知らないから大丈夫』


『僕達も話す予定はない。あの時

みんなで約束したから。』


『絶対に幸せにする。だから裕貴くん

お願い、お願いします。』



頭を下げられても、むりだ。


ここまで育ててきたのは、俺だ。

咲美愛は渡さない。渡せない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る