第59話

『おばあちゃん、ただいま』



パタパタといくつもの足音が

玄関へと向かってやってくる。



『え、え、えみちゃん?

どうしたの?1人できたの?』


奈保美叔母ちゃんが驚いた表情で

えみなに語りかける。



『拓望に送ってもらった』



『そっか、よかった』


ホッとした様子の奈保ちゃん。



『なおちゃん』


前々から考えていたんだ。

今日のがいいキッカケ。



『ん?どうしたの?』



『ここで暮らしていい?』



おばあちゃんが言う。


『どうしたんよ、咲美ちゃん。

なんかあったのかい?』



『おばあちゃん』



私は言う。もう後戻りはできない。

ずっとつらかったんだよ。



『お母さんが生まれたこの家で

私も生活したいの。だめかな。』



空気が凍る。凍りつく。

誰も言葉を発しない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る