第56話

『咲美愛、帰ろうよ』


もう一度、声をかける。



『もう、ほっといてよ!!』


『拓望は、拓望はわかってくれてると

思ってた!!拓望もママもパパも

みんな、みんな大嫌い!!』



『拓望なんか大嫌い』



『顔もみたくない。おばあちゃんの

ところにいく。ついてこないで。』



何もいえない。どうしたらいい。

こんなに泣きじゃくっている咲美愛は

はじめてで。どうしたらいいか

俺にはわからない。



『おばあちゃんの家、遠いから

そこまでは送るよ』



『いい、いらない。1人でいく。』



いい始めたら絶対にきかない性格だ。

でも、時間が時間なだけに譲れない。



『送る。暗いのに1人でいくなんて

危険ありすぎる。それは譲れない。』



『わかった』



渋々だかわかってくれた。



13年間一緒だったのに咲美愛が

わからない。2人で歩くのが

こんなに気まづかったっけ。


なんて、思ってしまうほど

会話ができない。

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