第54話

side 裕貴(ひろき、パパ)



『恋煩い』そう聞いていても

たってもいられなくなった。


俺の娘が恋だなんて。



咲美愛が生まれる前あんなに反対

していた自分がバカみたいだ。


生まれてきた咲美愛は小さくて

可愛くて。誰にも渡したくない

そう思ってしまったんだ。



母さんや父さんの分まで沢山

可愛がってきたつもりだった。


もう恋愛する年になったのかなんて

寂しくなってつい、キツく

言ってしまった。



違う、違う、そんなんじゃない

頭ではわかっていても勉強、勉強

ばかり言ってしまっていた。



咲美愛が無表情になるのも感じていた。



中学生になったから思春期も

始まってだんだん距離が遠くなって

きているのもわかっていた。


わかっていたはずなのに、

母さんが遺した娘を俺の妹を

立派に育て上げるそればかり

思ってしまい、拓望よりキツく

あたってしまっている。



俺、嫌われたかな。



咲美愛を叩いてしまった。


後悔してももう遅い。



まわりの声が何も入ってこないや。

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