第31話

ーーーーーー咲美愛ーーーーーー



『杉村 咲美愛、母さんの名字で

戸籍だそうと思う』



『えみな?どんな漢字かくの?』



咲美愛 と用紙に裕貴が書く。



『母さんが亡くなった日の朝

桜の花が咲いていたんだ。蕾もあった』


『えみなは未熟児だしさそれが

桜の、蕾の花みたいじゃん』



だからね、といって続ける。



『小さな蕾が成長し、大きく美しい花を

咲かせた時、その花が愛される象徴の

花であり、笑顔につつまれた花で

ありますように。笑顔の花だよ。』


『咲美愛ちゃんだよ、のん。』


『今日から我が家の娘。』



希美は泣き崩れる。


『えみちゃん、えみちゃん

蕾の花を咲かせてね。満開の

桜を咲かせてね』



2人は抱き合い泣いた。



『拓望、咲美愛を守ってな』



その祈りは叶わなかったが、

咲美愛の誕生はいろんな人の心に

勇気と希望をあたえた。

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