第9話

ふぅーっと息を吐くなおちゃん。


さっきまで取り乱していたのが

嘘みたいで凛々しくみける。



『きょう、黙って聞きなさい』



きょうちゃんは何か悪い話だろうと

静かになった。そして口を開いた。



『なに、なんの話』



その姿は普段のきょうちゃんではなく

医師としてのきょうちゃんの姿だ。



『咲美ちゃんがね…………になった』



目を伏せてなおちゃんは言う。

目は充血し今にも涙が溢れそうだ。



『なんの冗談だ、笑えないぞ』



少し怒り気味にきょうちゃんは言う。

ああ、予想通りの展開になってしまった。



『咲美、本当なのか?』



『うん、本当。』



『どこで診てもらった。』


怒っている。確実に怒っている。



『俺が抜きだったのは大学病院で

働いてるからなのか?なんでこんな話を

俺なして話すんだ?これからのことも

考えていくのにそれはないんじゃないのか?』


『まぁ、それはいい。俺の病院にこい。

腕のいい医者がいる。そこで見てもらえ』



きょうちゃんの病院は嫌だった。

なんでも気を許せるきょうちゃん。



甘えてしまいそうで嫌だった。




誰かに甘えることはわたしが


1番嫌いなことなのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る