ただいまのない夏

水瀬彩乃

ただいまのない夏

「お母さん、アイス買ってくるからお金ちょーだい!」


キッチンに響く若い娘の声と、母の鳴らすトントンの包丁。


「いってらっしゃい。」


娘は母に見送られ、自転車を漕いで坂道を下った。


娘は飛んでいきそうな気分だった。


いつもと違う、縛られない夏の開放感をまとった気分になった。


娘の心は止まらない。


自転車も、止まらなかった。

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ただいまのない夏 水瀬彩乃 @hitorichan

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