第92話
☆
「―――……妃愛。」
幾分か悪阻が落ち着いているのか顔色がいい妃愛がお昼ご飯を食べに来た。
リクエストのゼリーと幼い頃好きだったフルーチェや食べれるかわからないがお粥も一応作った。
食べられるものを食べて出産に備えないとな…と俺も腹を括るしかない…
って、思えてないけど。
「……パパ、お昼……ありがとう。」
「うん……どういたしまして。」
妊婦の娘と何年もまともな会話をしてこなかったから、何を話していいか悩む。
俺が家に居るのに、1階に降りてくること自体、珍しいと思って少し動揺してる。
「………反対、してる?」
「………分からない。俺も同じくらいの年齢だったから。
妃愛が幸せになって、後悔の無い人生送ってくれるなら俺の役割は終わりだと思うしかないなって…思うけどね。」
「………うん。」
「妃愛、母親になっても俺の娘には変わりないから―――……。
それと、ごめん。苦労かけて、我慢させて、妃愛は辛かったと思う。」
「………うん。」
「妃恋と三つ子のお姉ちゃんになってくれてありがとう。
文句言わずに面倒見てくれてありがとう。これからは、三つ子よりも自分と子どもの為に生きなさい。
パパの役割は終わったから…でも、帰る場所はあるからいつでも頼ってきなさい。」
「………パパ……。」
俺の後悔は四つ子に寂しい思いをさせてきたこと。
三つ子育児に終われ、一人一人とちゃんと向き合えてこなかったと思ってる。
だから、ショックも大きかったと思うんだ…。
「わたし……自立できない…って思うかもしれないけど暮らすならこの家だから。悠太とも話して、二世帯の家建てて敷地内に住もう…って。」
「それは嬉しいけど、光妃や妃来とかと揉めることにならないか?
それはおいおい、妃愛と悠太くんの生活が落ち着いて基盤ができてからだな。」
「うん、わかってる。」
素直に嬉しいと思った。
妃愛は近所、敷地内に住もうとしてる。
それだけでも、嬉しいと思う。
若いし、誰かの手が必要…となった時、妃愛が頼りやすいのは実家だと思う。
遠慮なく頼れる場所があったほうがいい―――…それは、四つ子育児で痛いほど痛感した。
愛梨の両親、兄弟、祖父母の助けが無かったらあの頃の俺と愛梨には四つ子育児は難しかった。
だから、その時から決めていた。
子どもが結婚して親になった時、いつでも頼れる場所であろうと―――…。
思っていた以上に早くその時はきたな、と今は思ってる。
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