親子の和解。

第79話

side 史哉



次男の朝妃が玖賀から出ていって17年が経った。

出ていったといっても、仕事は玖賀で働いているし、顔は合わせているけど

幼い頃の厳しい躾と俺の双子の兄の息子という厚い壁が俺と朝妃にはあって長年溝を埋められないまま年数が経った。



幼い頃から、朝妃は

双子の兄の優哉に懐いていて優哉の跡を継ぐと思いきや、玖賀に留まってくれて

跡を継いだ妃響のサポートをしてくれている。



定期的に優哉夫妻や兄弟と会ってるという情報は奥さんから聞くが、

朝妃は仕事人間でプライベートは謎に包まれている。

親子なのに、朝妃が仕事が終わったあとどこに帰ってるか知らないし、住所も知らない。

玖賀で泊まる時もあるから謎に包まれている。


息子達は家から巣立った者が数名居るがほとんど近隣に住んでるし、

会おうと思えば会える距離。



朝妃を除いたら仲良しの家族といってもいいのだが―――………。



何年経っても溝は埋まらない。




「………はぁ。」



「なに?ここ最近ミスはするわ、ため息吐くわ、どうしたの?らしくない。」



「………なんでもねえよ。」




丁度、仕事が終わり朝妃と妃響が会話しているのが聞こえた。



らしくないミスが続いてる朝妃に雷を落としたのが最近の出来事。

尚も続くミスに、体調が悪いのか、元気がない朝妃を見てると暫く仕事を休ませるか…とも、考えている。



体調が悪いのか、なんなのかわからないから何も言えない状況だ。



「なんでもなくないっていえる?

朝妃らしくないミスたて続いてるけど。

本当にどうしたの?」



「なんも、ない。

お前に言ってもわかんねえし…。はぁ。」



「いや、言ってくれないと俺も何もできないけど?」



「ははっ、だな。お疲れ。」



「おいっ、朝妃!」



時刻は22時30分をまわっている。



朝妃が起こしたミスの対応で残業が1ヶ月ほど続いてるから疲れてるのだろうか?

急激に痩せたように見えるし、どこか体調崩してるのか…?




優哉…になら、相談してるのだろうか。




朝妃が18歳の時に病気で亡くなった俺の双子の兄貴で、朝妃の実の父親。




実の父親亡き今は、

俺が父親でありたいけど、朝妃からしたら育ての親にしかすぎないだろう…





中高生、ほとんど優哉の家で暮らしていたからな―――……。

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