第60話

「結妃をッッ…帆波ちゃんを死なせた……

結妃に言われたんだよッッ……お姉ちゃんの代わりの犠牲作るのかって……。

妃愛はッッ……菜緒、妃葵、妃芽乃、結妃の犠牲になった……!

そうだろッッ……?死にたかったんだよッッ……妃愛もッッ……パチン……『ふざけんな!』」




頬に痛みを感じると同時に、息子の怒鳴り声が部屋に響き渡る。





―――……引っぱたかれた?





「ふざけんなっ、ふざけんなっ。

そうだよっ!妃愛は姉ちゃん達の犠牲になってたよ!代わりになってたよ!

だからと言って、罪の償いもせず逃げんのかよっ!親なら……信じろよ!

娘の帰りを待てねーのかよ!」




信じたいよ。



娘を信じたい……。





「帰ってこないよッッ……。

俺の元になんか……妃愛は帰ってこない!

妃愛の行動が答えだろ!!!

家とは逆方向、30km以上離れてる……それが答え…………だろッッ……」





届かなかった……って思った。




父子間の信頼関係は築けてないし、

俺を嫌っていた妃愛が、「おかえり」って言って欲しいのか?




自信がない。





「どんな理由があっても、信じろよ…

娘だろ?親父の娘……だろ?なあ……

じゃあ、なんで引き取ったんだよ……」





消えそうな声で呟く妃響の声が胸を締め付ける。





息子たちの仲で特に妃愛に構って、仲良かったのは妃響だったと思う。





「素直に喜べなかったよ……

赤ちゃんが女の子って聞かされて……

ああ、結妃姉の犠牲になるのかって思ってしまった自分が今も憎いよ!」






妊娠……中のことだよな。





蒼哉と朝妃と妃響は妊娠のこと聞いていたんだもんな……。

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