第54話
***
俺は言った。
家に帰ってきた娘に。
「妃愛のパパにならせてほしい。
優哉の墓参りに一緒に行こう。」と。
「返事は待って欲しい。」と言われたが……優哉夫婦の命日までは1週間を切っている。
飛行機の手配、ホテルの手配とかを考えたら……猶予がないのが現実。
優哉夫婦が亡くなって12年。
奥さんが亡くなって10年。
心が折れそうな日々も、子ども達の存在に支えられて生きてきた。
残るは末3人。
大学生の息子ふたりと娘のみ。
今まで全力で子育てしてきたから手がかからなくなって寂しさがある。
自分にこれも嬉しいことだと言い聞かせて毎日を踏ん張っているんだ。
脳裏に焼き付く、結妃の哀しい叫び声。
「パパの娘に生まれてきたく無かった!
なんで、双子だったの!なんでひとりに減らさなかったの?
なんで、妃芽乃は死んで私が助かったの?
お姉ちゃんの分まで生きてねって、どれだけ残酷な言葉か知らない癖に……!」
" 父親って名乗らないで! "
" わたしに父親は存在しないっ! "
17歳の娘の悲痛な叫びは、俺の胸を締め付けた。
―――……娘を苦しませたのは、俺だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます