第14話

わたしは知らなかった。




ママがひとりで出産した理由も、

育てようと思った理由も、

一緒に暮らしただけで本当は婚姻届を出していなかったことも、全部知らなかった。



急激な癌の進行でパパが

「入籍しよう!妃愛を引き取って育てる!」と言ってくれても、ママが拒んだことを知らなかった。




ママが亡くなったあと身寄りを失ったわたしをパパが引き取ってくれて、

今の生活がはじまったんだ。





だから、わたしはパパを裏切れない。





拾ってもらった恩があるから、

わたしはパパを裏切れない。





***




「あっつぅ〜……。」




太陽の陽射しが暑い。イタイ。




泣きながら飛び出した手前、なんて言って帰っていいかわからない。

どんなカオしていいのかもわからない。




昨日は、パパは仕事の出張で遠出していたからわたしは帰りを遅くした。

パパには連絡されるだろうけど、怒られるのはお兄ちゃん達だけって知っていたから、時間を気にしつつも帰る気になれなかった。




自分についてきたいくつもの嘘が今の自分を苦しめる―――……。





「言わなきゃ良かった……。」零れる、わたしの本音。





全てはあの日、苦しむママを見兼ねて「玖賀家に帰ろう。」って言ったのがはじまり。




パパはお兄ちゃん達が居るのに、仕事があるのに、全て放ってママの元に来た。



優くん夫妻が亡くなってから仕事、家事、育児を両立しながら、

ママの元へ通ってきてくれたんだ。





だから、見兼ねて言ったんだ、わたしは。

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