1.

第1話

「ねぇ笑菜えな、20歳になったら僕のお嫁さんになってくれる?」


「うん!」


「ほんと?」


「うん!えな、ウタもオトも好きだもん!」


「じゃあ約束!絶対だよ!」




真夜中、家を抜け出し菜の花の咲く庭先で受けたプロポーズ。

その意味などまだよく分かっていない頃の約束だった。







長嶺ながみね 桜都おと

長嶺ながみね 詩楽うた



隣に住んでいる双子はふたつ上の大切な幼馴染。






「笑菜おいで、ピアノ弾こう?」


「詩楽みたいに弾けないからヤダ。」


「一緒に弾いてあげるから、僕のお膝に乗ってもいいよ?」




幼かった私はその言葉にピクッと反応を示すと

喜んで詩楽の膝によじ登り鍵盤を鳴らした。


顔を上げれば桜都が頬杖をつき、こっちを見て笑っている。



優しくて穏やかな時間、…



だけど、そんな日々は長く続かず時だけが過ぎていった。

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