我々の業界ではご褒美です!? ダンジョンハーレム配信記 〜お気の毒ですが、JCは呪われてしまいました。空撮もあるよ〜

ヤナギメリア

第1話 我々の業界ではご褒美です【配信回】

 斥候には本職である小林と、和崇で行う事になった。階段を降りた先に、その妖魔たちは互いを睨み合っていた。


 全体としては大きな黒い鳥だ。全高は5mほど、異常に発達した脚と、くの字に直角に折れ曲がった長い首。

 そして、見開かれた額の、なんの感情も読み取れない不気味な一つ目。手前近くの片方の翼が折れた一匹を、奥の無傷の一匹が僅かに低く唸り、威嚇し続けている。


「ブラックスワルトの変種。やはり仲違いしている、か」

「ど、どうしますか?」

「予定通りプランAだ。もう中佐も配置についている」


 ダンジョン最奥は、まるで別の世界のようだった。聖域と呼ばれる所以。地上よりも明らかに高い天井と、広域の浜辺、静かに水を湛えた、清澄な湖。

 人がみだりに、足を踏み入れるべきで無い領域。絶世の美も相まって、人の世でない、異なる世界のナニカが御座おわすとしか、和崇は思えなかった。


 事前に時間を合わせた時計を確認し、全員が配置につく想定の時間が過ぎた。


 意識が高揚し、喉が渇く、心臓の拍動が高鳴る。


「始まる」

「はい……」


 睨み合っていた妖魔の足元で、バササッと布を剥ぐような音が響いた。音に敏感に反応したブラックスワルトは、宙を流れ行く隠密迷彩布ギリーマントを一つ目で追ってしまった。

 はためく布の切れ間。その隙間から。


「もらいました」


 流麗なまでの一撃。歪み捻れたブラックスワルトの醜いクチバシは、いともあっけなくロング・ソードで切り離されてしまった。


【うぉおおおおおお!!?】

【まばたきしてねえのに、見えなかった!?】

【やだ……美しい……】

【中佐! 中佐! 中佐! 中佐ぁ!!】


「グゥゲェエエエエエエエ!!」


 配信コメントが掲示魔法で感じ取れる中、咆哮が響き渡る。血は流れずとも苛立たちげに両の翼を広げて、ブラックスワルトは中佐を何度も弾き飛ばそうとした。

 彼女は余裕を持って華麗に身を引き、わざわざ切り飛ばしたクチバシを拾いあげた。


「──── ぅふ♡」


 心底イヤらしい笑みを見せつけると、彼女は自らの舌で挑発的にクチバシの先を舐め上げ始めた。

 何度も何度も執拗に、嬲るように、徹底的に、退廃的に、いっそ口先だけで犯しきるように、じゅり、じゅるぅ、と淫靡なまでに微笑んで。


【やだセクシー……】

【エッロ】

【ふぅ……】

【この動画にはセンシティブな内容を含んでいる可能性があります】

【青少年の何かが危ない!】

【これ一応、全年齢制チャンネルッスよね?】

【あ~お客様、お客様ぁ! イケません、イケませんよぉ!?】

【達した】


「まっずい。薬物にも、食べ物にも、なってくれそうに無いですね」

「グッ……グッ……グゥゥッ……!!」


 一瞬で火に油を注がれたように、ブラックスワルトは大激怒した。何より気に入らなかったのは、美醜の差だった。彼は醜く妖魔として生まれ、他者に憤慨を持って蹂躙する者。

 それがこうも自身を犯し、美しさを淫乱に振りまく、矮小なドラゴニュートを目の前にしてしまった。嫉妬、憎悪、嫌悪、激怒がない混ざり、もはや咆哮すらあげず額の一つ目は灼熱に血走った。

 激怒だ、激怒しかない。殺す。絶対に何を犠牲にしても、たとえ自身を犠牲にしても、こいつだけはブチ殺す。彼の思考はその一点で、真っ赤に染まりきっていた。


「腑抜け。悔しければ取り返しなさい。出来損ない」


 軽やかにクチバシを手先でもて遊び、中佐は空へと飛び上がった。ブラックスワルトも猛然と飛び上がる。突然の事で唖然とした翼の折れた一匹を残して、熾烈な空中戦が始まった。


 そして、それが彼らの決して外せない、勝利の鍵たる第1条件だった。


「今だぁあ!!」

「え、えぇい!!」


 じりじりと気づかれないように近づいていた和崇と小林。合流したメイジーがそれぞれ3つの円筒状の物を投げた。


 スタン・グレネード。一瞬で三半規管と目を潰す閃光と騒音。

 最も早く投げつけた、和崇の一つが炸裂したと同時に、スキルの発動条件が満たされた。


【ポケット見ろ! スマホの背面が真っ赤だ!?】

【ユニークスキル!?】

【ここでか】

【だが目立った変化は無い】

【なんのスキルなんだ!?】


「たたみかけろぉお!!」

「そこっ!!」

「うわぁあああああ!!?」

「ギィエェエエエエエ!!?」


 小林とメイジーによる、拳銃の出鱈目な狙いの銃撃。不思議と前方の和崇には掠りもせず、全弾吸い込まれるようにブラックスワルトに命中。

 閃光、轟音、銃撃。そして、和崇のコンバット・アックス。鋭い翼と交差したそれは、手元から砕けながらも翼に深い傷を負わせた。


「グゥエェェェェエエエエエエ!!!」

「うぉおおお!?」

「うぁあっ!! ………和崇さん!?」


 ブラックスワルトは血を流し、堪らず折れかけの翼で強引に飛び上がった。受けたアクリル・シールドごと歪ませて巻き込まれた和崇は、風圧と翼の下敷きになって潰された。


「こんのぉお! ブリザー! ストォオオーム!」

「セイント・ウォール! 発動ぉお!!」


 決して覚られないようにスタン・グレネードの轟音が響いたと同時に、階段から転げるように移動していた雪馬と高橋が、必死の形相で呪文を唱えた。


 なけなしの魔力による結界と、雪馬による氷の暴風は、ブラックスワルトの風圧と一瞬拮抗して、翼の方が持たず弾けた。


「しまっ……逃げてぇえええ!!?」

「うっ……」


 死の悪寒を敏感に感じ取り、悲鳴をあげる雪馬。両の翼が破壊され、落下するブラックスワルト。その真下には動けない和崇が居た。

 轟音と共にブラックスワルトは地面に衝突し、和崇を確実に巻き込んで、大地は大きく陥没してしまった。





☆☆☆☆☆★★★★★


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