君の存在という悪魔の証明

たれねこ

第一章 ただ君のことを想う

第1話 愚者のモノローグ

 まだ君のことを覚えている――――。


 あの日、花火に見惚れていた横顔も、ニコッと微笑むように笑う幼いころから変わらない笑顔も。

 どんなに騒がしくても雑踏の中からでも、俺だけは聞き分けることができる少し高く澄んだ声も、その声で何度も「ユウくん」と呼ばれたことも。

 そして、恋人になった日に繋いだ手から感じた君の温もりさえも――。


 神隠しに遭い世界から存在を抹消され、忘れ去られてしまった君――弓月ゆみづきはるかのことを、俺だけは何ひとつ忘れていない。

 たとえ目の前にいなくとも、記憶に、まぶたの裏に、耳の奥に、心の中に――君は変わることなく居続けている――。

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