僕と幽霊の追憶旅

小鳥遊 なの

第1話

忘れ物を取りに…

僕は、藤堂 蓮。工綺高校に入学してから、まだ3日しか経ってない。それなのに、もうやらかしてしまった!明日提出の宿題を、なんと学校に忘れてしまったのだ!気づいたときには家におり、19時を回っている。どうすることもできない。


もう諦めるしかないか…そう思ったが、でも、入学早々で笑われるのも嫌だし、成績にも響く。


「めんどくさいけど、仕方ないなぁ」


こっそり取りに行くことにした。




学校に着いた。校舎は真っ暗で、先生たちはもう居なかった。とはいえ、監視カメラが設置されているから、もし校舎に入ったのがバレたら大変なことになる。そういえば、昨日の帰りに非常階段を見つけたんだ。そこなら鍵が開い

てるかもしれない。僕は校舎裏の方へ急いだ。


校舎裏に近づくと、ふと視線の先に旧校舎がぼんやりと浮かび上がっているのが目に入った。旧校舎は昼間はただの古びた建物に見えたが、夜の今は重苦しい雰囲気が漂い、まるで誰かがこちらを見ているような気配さえ感じる。なんだか重苦しい雰囲気だ。


旧校舎は創立当時からあり、昔使われていたらしい。だが、新校舎が建てられてからは次第に使われなくなり、今では廃墟同然だ。それでも、なぜか取り壊されることなく長年放置されてきた。何かの理由で残されているのだろうか――いや、理由を考えてる時間はない。急がないと、どんどん時間が過ぎてしまう。僕は非常階段を駆け上がり、ドアノブを回した。ありがたいことに鍵が掛かっておらず、簡単に開けることができた。


校内案内の説明があったおかげで自分の教室の場所はすぐに分かったが、教室の扉は施錠されていた。しかし、運よく教室の窓が少しだけ開いていたので、そこから中に入ることができた。


「…あった、あった。良かった、これで宿題を忘れずに済む」


宿題をカバンにしまい、ホッと胸を撫で下ろす。廊下に出て帰ろうとしたその時だった。



――カリッ…カリッ…



と、何かを引っかくような音が聞こえてきた。 少しだけ胸がざわついたが、それよりも気になったのはその音の正体だ。もしかして、不審者? それとも何か別のもの?そんな疑問が頭をよぎると、自然と足は音のする教室へ向かっていた。怖いよりも、知りたい気持ちが勝っていた。


教室を覗くと、そこには一人の女の子がいた。黒板に向かって何かを書いている。こんな時間に、一体どうして――そんな疑問が頭をよぎる。僕は教室の扉をゆっくり開け、声をかけようとした。


しかし、その時気づいた。彼女の制服は見たことがないデザインだった。足元を見ると、彼女の足がぼんやりと透けている。いや、足が…ない?


僕が息を飲んだ瞬間、彼女は僕に気づいたように顔をゆっくりとこちらへ向けた。すると、


「見たな…」


と言って、こちらにじりじりと近づいてきた。僕は背筋が凍り、何故か勝手に足が動いていた。本能が逃げなきゃと叫んでいる。


ハァ、ハァ、廊下を全速力で走った。

恐怖に駆られ、自分がどこに向かっているのかも分からない。ただ、追われている感覚だけが強く残っていた。後ろを振り返る勇気なんてない。足音は聞こえないはずなのに、彼女の存在が背後に感じられる。息が詰まりそうだ。


「あっ!」


不意に僕は躓いて転んでしまった。床の冷たさが体中に染みわたる。立ち上がろうとするが、恐怖で足が震えて動かない。静寂。何も聞こえない。息が荒く、心臓が爆発しそうなほど鼓動が早くなる。全身が汗で濡れている。


ふと、暗闇の中で彼女の姿がゆっくりと近づいてくるのが見えた。音もなく、ただ迫ってくる。顔も暗くて見えず、ただその存在が恐怖へと導いている。だんだん目の前が暗くなっていく。気が遠くなる寸前、彼女が僕の真上に立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る