第22話

「ちょ、分かったから声のトーン下げろよっ!他の奴らに聞かれたら…」



ギョッとした俺が小声で反論すると、ハッとしたように本人もまずいと思ったのか口を抑える。



口を噛んで視線を泳がせた出雲汐里はどうやら一旦は冷静さを取り戻してくれたらしく。




「……とにかく、付き合ってないから変な勘違いしないで。」



声のトーンを落とし、何度目かのそれを伝えてくる。



しばらくの沈黙があった後、俺は再度ため息をついた。



「……あのさ、んなに勘違いされたくねえならあんなとこでイチャつくなよ。」



ホチキス止めを再開し始めながら俺がチラッとその顔を盗み見ながら言うと、出雲の顔が赤くなる。



「い、イチャついてなんかないからっ…!」



必死にそう反論する出雲だけど、そんな顔しといて………。



俺は呆れて出そうになったため息をグッと堪えた。



ほれ見ろ。

どこが付き合ってねえだよ、その反応。



「…普通、教師が生徒のこと"しいちゃん"なんて呼ばねえんじゃねーの」



出雲の反応を見て、なぜか加虐心が芽生えた俺の心が悪戯に嫌味なことを口にさせた。

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