第2話

「あっ、汐里シオリちゃんだ〜〜」



昼休み、食堂で学食組の俺と同じクラスの山川樹ヤマカワ イツキ真田浩介サナダコウスケの三人で飯を食ってると、突然、山川が語尾にハートマークを付けたような声を出した。



またか……。



その視線の先をつられるように追ってみると、樹が入学してから約一年と三ヶ月の間ずっとこそこそ観察している女の姿がある。



「かわいい〜ホントかわいい〜。マジ癒される」



ただ食堂の前を通り過ぎただけで、樹の周りにはハートが散らばるように飛んでいる。



「かわいいって…、お前どこ見て言ってんだよ」



校内一可愛いと噂の女は、ひとり年中マスクを付けていて、今も目しかでてねえし。



カレーを食べながら呆れたように言ってやると、樹が俺を睨む。



「マスクしてても校内一の爆美女はオーラがちげえんだよっ!」



オーラって。



んなの、あったか?



まあ確かに顔は信じらんねえくらい可愛いことは認めるけど。



睨まれた俺がやれやれとわざとらしくため息をつくと、樹は俺にさらに噛み付いてくる。



「あの!!!出雲汐里いずもしおりちゃんがそこを通ったんだぞ!見たかよ、あのかわいい歩き方…」



あの、ってどのだよ。



樹が熱く語ると、浩介が隣で「はいはい」とそれを宥める。

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