第75話

多分、それはいないと思っていた人物がそこにいたから。



人影のないところから人が出てくると、驚く。



恐らくそんな感じ。



驚いて出していた足を無意識のうちに止めると、来店のメロディーが流れたからか、不意に息吹藍が入り口の方へ視線を向けた。



そして入り口から入ってきたばかりのわたしがそこにいるからもちろん目が合い。



「ど、うも…」



口からそんな言葉しか咄嗟に出てこなくて、詰まりながらも声を出すと、わたしを視界に入れた息吹藍が笑った。




「んな冷たくすることねぇだろ」



たしかに…。



今の挨拶はどう考えても他人行儀すぎたと自分でも思った。



会計が済んだらしいコンビニの袋を手に持ち向かってくる。



「塾の帰り?」



「うん、お母さんが醤油ないから買ってこいって…」

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