第9話

「まあ、親父も俺に後継がせたいらしいからさ。分かるには分かるんだけど」



わたしがあからさまに驚いた顔をしていたからなのか、横にいる薫くんがやはり笑ってそう言う。




ああ、そうか…。




「そういえば、お医者さんだっけ?薫くんのお父さん」



「うん、開業医ってやつ。」



「そうかあ、すごいね。それ、何科なの?」



「内科だよ。この話、前もしなかったか?」



そう言って少し呆れたように笑われる。




え?

そうだっけ…。



でも父親が医者あることは知っていたから、もしかしたらしたのかもしれず。



「ごめん、してたかも…。」



「いや、別に全然いいんだけど。人の親が何科の医者なのかとか誰も興味ないだろうし」



「そういうわけじゃ…」



少々気まずく思っていても、本人はさして気にもしていない様子で「俺も忘れると思うし」と言って笑っている。

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