恋愛判定機

マッシー

第1話 「恋愛判定機」開発のきっかけ

 結婚相手を先輩や親戚がお世話してくれていた昔と違って、今は自分で見つけなければいけません。結婚を前提にしていなくても、彼女や彼氏を見つけるのに合コンや街コンやお見合い番組に出場するのはまだいい方で、ネットの出会い系サイトは最悪だという話を聞いています。

 運よく彼氏や彼女を見つけて相手のことを好きになったとしても、その相手が自分のことを本当に愛しているかどうかを見抜くのは容易ではありません。


 これは好きになった相手が自分のことを本当に愛しているか、どれほど本気なのかを判定する機械を開発した若者のお話です。


 私の名前は河村雄介、京阪大学で脳科学を研究している大学院の学生です。

私のおじいさんは河村正臣といい、昔は大学教授をしていたと聞いています。

 おじいちゃんの時代と違って、今は国立大学も金儲けをしないといけなくなって、私の研究室のお茶の水教授は、ベンチャー企業を立ち上げるのに躍起やっきになっています。


 そこで私は、私の研究室でかなり進んでいる脳科学の「夢判断」を使って、恋愛相手の本気度を測る機械を開発することにしました。

 そのきっかけは、私のおばあちゃん、河村真理子が話してくれた、次のような話からです。


「あなたのおじいちゃんが大学を定年退職して二週間たった四月の中旬、熊本で大きな地震があったのよ。それも二回も。どちらも震度七強だったけど、一度目はたいしたことなかったの。

 二度目は一回目の地震の次の日の夜中に、ものすごい揺れが長い時間続いたのよ。

 その時、あなたのおじいちゃんは私の上に覆いかぶさって手を突っ張って、家具が倒れてきても私が怪我したり死なないように私を守ってくれたの。そのおかげで、家が壊れても、私は無事だったの。

 雄介も知ってるように、あなたのおじいちゃんは見栄っ張りだから、熊本地震なんて知らないみたいな涼しい顔をして、今でも自分の好きなことばかりやっているでしょ。

 私はブスだったけど、あなたのおじいちゃんがもらってくれたから、私はおじいちゃんにずっと好きなことをさせていたの。

 おじいちゃんが出張で、地球の裏側や地の果てみたいな所に出かけても、何も言わずに笑顔で送り出していたのよ。

 本当は死ぬほど心配だったけどね。

 でも、あの地震が来るまでは、おじいちゃんがおばあちゃんのことを本当に愛してくれているかどうかは分からなかったわ。

 あの熊本地震の日、おじいちゃんは、たとえ自分が死んでもおばあちゃんを守ろうとしてくれたから、私を心から愛してくれていることが分かったのよ」


 その話を聞いて私、河村雄介は、これだと気づきました。

 自分の命と引き換えに相手のことを守ろうとするかどうか?

 そういう命の危険を夢の中で疑似体験させて、どうゆう行動を取るかを記録する装置を私は開発することにしたのです。

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