『妖怪 ‘’かんばん‘’』

やましん(テンパー)

『妖怪 ‘’かんばん‘’』 『全3話』


 首都の夜をさ迷ってみれば、そこらじゅう、看板だらけなのがわかるであろう。


 首都に看板が沢山あるというよりも、看板が集まって、首都になっているのである。


 しまやんは、下町で小さな看板屋を営んでいた。


 もちろん、伝統的な看板も書くが、いまは、小型電光看板やでんこうちらし、が主力である。


 しかし、大手企業さまに対して、小さな看板屋は、小回りが利くと言えなくもないが、それだけである。


 大きな仕事はあまりなく、小さいものが主体である。


 たこ焼き屋さんの店先に出す、縦長の電光看板とかでんこうちらし、もやる。


 『うまい! おばちゃんの手焼き!』


 すると、おばちゃんの姿が浮かび上がる。お客さんの笑顔が破裂する。ついで、でっかいたこ焼きが登場する。とかである。


 最近は、でっかい空飛ぶ看板も人気である。


 これにも種類がある。


 昔から、飛行船にでかい電光看板を張り付けたりも、していたが、昨今は看板自体が空を飛ぶのである。


 ただし、ちゃんと法律で規制があって、でかい飛行電光看板は、役所の許可が必要である。ルートも登録する必要がある。


 飛行、ではないものもある。商店街の屋根全体が看板になっていたりもする。こいつは、伝統的な部類である。電車の内側の窓に装置したりもしてきた。


 まあ、昔のドローンが看板化したみたいなのもあるのだが、昔のドローンは、落ちると危ない。だから、そういうのではなくて、頭に当たっても怪我はしない位の重さしかない、お手軽なものが開発された。紙のちらしと似たようなものだ。ただし、七色に光り輝くのだ。


 いま、一番巷ではやりなのは、そうした『でんこうちらし』なのだ。


 飛ぶのは、ごく、狭い範囲だけである。商店街の中だけとかだね。


 自立型で、自ら当たるべきではない障害物などは避けて飛ぶようになっているのである。自動車の窓とかであるな。ただし、人間のすぐ前には、ちゃんと降りなくてはならない。ここが、テクニックである。


 ただし、あまり、長持ちはしない。


 使い捨てである。


 一定時間経つと、自動的に消滅するのである。だからして、ごみにはならないのだ。


 古いドラマみたいに、ぼわっ、と、燃えたりもしない。


 ただ、大気の中に、すーっと、消えるのである。火傷もしないし、害がある気体も出さない。



 さて、で、妖怪『かんばん』は、これに、非常に迷惑していたのである。


 という、のも、『妖怪かんばん』は、ちらしに化けて、人の手に落ちると、読もうと努力しているうちに、ぱっ、と消えて驚かすのが、その本性の一部だからである。むかしは、名前のごとく、看板に化けて、人を化かすのが一番楽しかった。


 しかし、人類がスマホを持ち出して、確認するようになり、間違っているとすぐに役所に電話する。


 もちろん、担当者が、来る頃には、とっくにずらかってはいるが、役所側もなにかと注意するようになり、あっちもこっちも、高性能監視カメラだらけになり、近年は非常に、ま。やりにくくなっていた。


 妖怪かんばんは、かなり、ナイーブで、気は弱いのである。


 ただし、やたら、いたずら好きであった。



 そこで、むしろ、でんこうちらしになりすます、という荒手にでたのである。


 



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