約束の時間に

 伊吹とのボウリングを終えた私たちはお姉さんとの待ち合わせ場所のカフェにやってきたやってきた、すると


「火乃香ちゃん!待ってたよ!」

 とお姉さんの声が聞こえて振り返るとお姉さんが満面の笑みで近づいてきた。

「お待たせしましたお姉さん」

 お姉さんは少し不満そうな顔をして

「私のことは夕陽って呼んで」

 と言われた、別の困ることではなかったので

「じゃあ、夕陽さんでいいですか?」

お姉さんは嬉しそうに

「本当は呼び捨てでもいいのだけれど、今はそれでいいわ」

と言ってくれた。そして私たちは本題について触れることにした。


「今朝のことなんですけど、この婚姻届とファンってどう言うことですか?」

率直な疑問をお姉さんに問いかけるとお姉さんは不思議そうな顔をしながら

「結婚するなら婚姻届は必要でしょ?」

と当たり前のことのように言った。すると今まで黙っていた伊吹が

「お姉さん大丈夫ですか?」

と本当に変なものを見るような目で聞いてる。

もちろん私も伊吹と同じことを思っている、朝初めて会った人に婚姻届を4枚も渡されてファンですと言われてもピンとこないのは当たり前だと思う、その理由を聞いてこんなことを言われたら誰だって理解が追いつかないのも仕方ないだろう。


「私は大丈夫よ、火乃香ちゃんが可愛くて結婚したいと思うから婚姻届を用意した。それにファンって言うのは今まで会うことができなくて直接話せなかったから妄想や過去に撮った写真を見ることしかできなかったから言っているだけよ。」

 

お姉さんが当たり前のように私の隠し撮りの写真を見せてきた、しかも一年前の。そこに映る私は今日のように新しい生活への期待で夜眠れなくて寝坊した入学式の日の私だ。


「悪いことだとは思ったのだけれど、どうしても火乃香ちゃんが可愛くて居ても立っても居られなかなって写真を撮ってしまったわ、本当にごめんなさい。」


お姉さんが少しショボンとなって謝ってくれたし元から責めるつもりはなかったので。

「盗撮はダメだけれど謝ってくれたので今回は大丈夫です。」

と伝えた、伊吹はそれでもダメだと言っていたけど実際可愛いと言われた少し嬉しかったのも事実なので今回だけはほんとに許そうと思う。


それよりも私が気になっているのはこの4枚の婚姻届だ、1枚ならまだしも4枚も私まだ高校2年生なのに。

「なんで婚姻届が4枚なんですか?」

頭の中の疑問をそのままお姉さんに聞いてみた

「それはね、あなたと結婚したいっていう人が私含めて4人いるからよ。」

とよくわからないことを言われた。

「今まで黙って聞いてたけどお姉さん日本の法律知ってます?」

隣から伊吹がお姉さんに疑問をぶつけていた。

「もちろん知っているわ、男女ともに成人した18歳以上の男女である。でしょ?」

伊吹はさらに不思議な顔をして

「知ってるのになんで同性でしかも4枚もなんですか?普通に考えて無理じゃないですか?」

「そうなんだけどね、何か形に残るもので残したかったの、実際に結婚はできないけどでも婚姻届に書いて少しでも本当に結婚したみたいにしたかったの、4枚な理由はあなたのことを好きな人が私の他に3人いるからよ」

お姉さんが婚姻届を用意した理由がやっとわかって少しスッキリした、けど、


「結婚って急すぎません?それに他の3人は?」

そう、初対面の人に婚姻届を用意するのはおかしいと思う。すると、お姉さんは申し訳なさそうに、

「テンションが上がっちゃって、次に会った時にきちんと話をして私たちの気持ちを知ってもらってから渡そうと思ったの、他の3人はこの駅を利用しないから一番会える可能性のある私が待つことになってて、勢い余って全員分渡しちゃったの」

お姉さんが婚姻届を渡してきた理由もわかってなんとか今朝のことを理解できた。

ただ私は結婚とか考えたこともないし好きな人もわからない、それなのにどうすればいいか困っていると、

「火乃香が頭パンクしそうなんで、また別の機会にしません?お互い少し頭整理してから」

と伊吹が私のことを考えた提案をしてくれた。

私もそれに賛成だった。


 なので今回はここでお開きにして今週の土曜日にまた伊吹と一緒にお姉さんと会うことにした、お姉さんとは連絡先を交換したのでまた後日連絡が来ることになった。別れる前にお姉さんが伊吹と2人で話をしていたけど伊吹は内容を教えてくれなかった。伊吹を取られた気がして少し寂しかった。





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