山奥ニート、謎のダンジョンでレベルアップして無双生活始めます
犬ティカ
第1話 雨の日の訪問者と謎のダンジョン
今日は朝から雨だった。山奥でのニート生活にも慣れて、雨が降る日はいつも通り、ナスをかじりながらぼんやりと時間を過ごす。雨音が心地よく、寝転んでいるとふと昔のゲームのことを思い出す。あの頃は、ただひたすら画面の中で冒険していたけど、今はリアルでダンジョン探索ができるんだよな、と一人で苦笑いする。
すると、突然ドアをノックする音が聞こえた。誰も来るはずがないこの山奥で、訪問者なんて珍しい。俺は重い腰を上げ、ドアを開けると、そこには雨に濡れた一人の「女の子」が立っていた。いや、最初はそう思ったんだ。だって、その子はどう見ても女の子にしか見えなかったから。
「こんにちは! 突然、雨が降っちゃって……、雨宿りさせてくれませんか?」
そう言って、にっこりと微笑む。無邪気な笑顔に一瞬言葉を失ったが、俺は何も考えずに了承した。
「おう、入れよ。タオル使うか?」
素直に部屋に入ってきたその子は、タオルを受け取りながら礼儀正しく頭を下げた。なんか、こういうの久しぶりだなって思った。誰かとまともに会話するの、いつ以来だろう。
最初は女の子だと思ってたけど、なんか違和感がある。骨格とか仕草が少し硬いというか、よく見るとどうやら男っぽい。それに気づいた俺の視線を察したのか、その子が急に口を開いた。
「ああ、お外で女装コスプレするのが好きなんですよ。今のこの服も、西洋ファンタジー風で、まさに冒険の世界に入り込んだ気分なんです!」
「そうか、ああー、わかるわー。俺もそういうRPGにハマってたことあったしな」
まさか、女装コスプレの話で意気投合するとは思わなかった。俺は驚きつつも、そのノリに合わせた。雨音を背景に、ゲームの話でどんどん盛り上がっていく。
「ですよね⁈ まさに冒険のロマンですよ!」
ふと窓の外を見ると、いつの間にか雨が止んでいた。
「お、もう晴れたな。じゃあ、ちょっと散策に行ってくるわ」
「わたしも付き合いますよ。どこに行くんですか?」
「んー、昨日、洞窟みたいな場所を見つけてさ。でも、夕方だったから入るのは諦めたんだ。今日はその続きにしようと思って」
俺がそう言うと、女装くんの目がキラキラと輝いた。
「洞窟! まさにダンジョンじゃないですか! 今、私は女騎士キャラのコスプレだし、剣も持ってるからお供しますよ!」
「女騎士が仲間になった! 」
「ははは!」
洞窟の入り口にたどり着いたとき、俺たちは辺りを見回した。朽ちた鳥居がそこに立っていて、異様な雰囲気を漂わせている。あまりにも不自然な場所に存在するその洞窟に、俺は昨日からずっと興味を抱いていた。
「待ってろ、ちょっとこれを…」
周りを見渡すと、相変わらず不法投棄された廃材の山があった。俺はその中から、状態の良さそうな鉄パイプを拾い上げた。まあ、念のためだ。動物とかが住み着いてたら厄介だからな。
「まあ、護身用って感じだな」
「お兄さん、格好いいですねww」
洞窟に足を踏み入れると、冷たい空気が体を包んだ。薄暗く、何かが動いている気配がする。すると、突然目の前に青く透き通ったゼリー状の物体が現れた。
「なにこれ?RPGで出てくる最弱モンスターみたいだな」
スライムだ。どう見てもゲームに出てくるやつだ。俺は冷静に鉄パイプを構え、スライムが体当たりしてくるのを避けて一撃を加えた。あっけなくスライムは崩れ、消えていく。
その瞬間、目の前にRPG風のウィンドウが突然現れた。「ニートがレベルアップした!」というファンファーレまで流れている。
「うわ、なにそれRPGっぽい! ボクもやってみたい!」
再びスライムが現れ、今度は女装くんが脇差しの剣で一刀両断。スライムはまたもや消滅し、彼も同じようにレベルアップする。
「ウィンドウを見ると、パワーや運が上がってるっぽいけど、あんまり実感ないなぁ」
俺は試しにダンジョンの中に転がっていた石を拾い、握りしめてみた。すると、その石はあっという間に粉々に砕けた。
「ええ、マヂで力上がってんの⁉︎」
「wwwwww」
スライムを倒し続けて、二人ともレベル5になったころ、洞窟の奥からピンク色のクマが現れた。1メートルほどの大きさで、どう見ても普通のクマじゃない。
「なんだこいつ……?」
「わたし、悪い魔物じゃないヨォ。じめじめしたダンジョンは嫌だから、人間に飼われたいの……」
そのピンクのクマは、首につけたチェーン付きの首輪を差し出しながら言った。どうやら、「飼ってほしい」と言っているらしい。
「ええ、なんか同人誌みたいな雰囲気の魔物だなぁ」
「うん、じつはニートくんの家に忍び込んで同人誌を読んだり、見てたビデオを盗み見して、日本語を覚えたの」
「俺の性癖を暴露するのやめてくれ」
女装くんがクスクス笑いながら、冗談交じりに言った。
「拘束系が好きなんですね///」
俺は顔が熱くなるのを感じた。結局、この「デスコ」と名乗るクマを飼うことにし、洞窟を後にした。
家に帰ると、デスコを家の入り口に繋ぎ、俺はほっと一息ついた。
「あとでクマ小屋でも作るか」
「犬扱いで興奮する……」
「変態さんだなぁ」
「よし! 今日はドラム缶風呂を沸かして入るか」
「ボクも一緒に入りたい!」
俺がそう言うと、突然妹の梨花が家の前に現れた。
「お兄ちゃん、その女の人、誰?」
「えっ、妹ちゃん……」
こうして、俺の山奥でのニート生活は、ますます賑やかになっていくようだった。
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