別名、愚痴ノート

右遠あい

由衣のはなし

第1話

「なんか由衣ゆいっていつも楽しくなさそうだよね」



 盛り上がる会話に混ざらず、ぼんやりと窓の外を眺めていると、そう笑われた。

 それに同意しているのか、はたまた冗談であるのかはわからないけれどその場にいたほかの皆も「確かにねー」「いっつも暇そう」と高い声を廊下に響かせながら笑う。


 キャハハハハハハハハハ!


 頭の中をぐわんと震わせるような声に、思わず耳をふさぎたくなる。

 女子の笑い声が苦手だ。



「そうかなあ」



 あはは、と引き攣った笑みで笑ってみせたときには、彼女たちの話題はあっという間に今週末のテストに変わっていた。

 そのことにふう、と息を吐きながらわたしは再び廊下の壁にもたれかかり窓の外の青空に視線を向ける。


 楽しくないよ。全然。


 ぷかぷかと浮かぶ雲にそう心のなかだけで呟く。


 休み時間になるたびに、友人に引っ張られてわたしは仲良くもない女子たちと話に行く。

 陽キャとは言い難いわたしには、このノリについていくことは不可能だし、甲高い声で笑うなんてこともできない。


 だからわたしはいつも会話に混ざれずにいる。

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