第53話

ぎゅっと目を閉じているとガクの手が止まる。


でも目を開けられない。


ガクは強く私を抱きしめた。


「ごめん」


そう言ってボタンを元に戻す。


えっ…どうして?


目を開いたら大粒の涙が流れた。


「ノン…」


指で涙を拭ってくれる。


それでも涙は流れ続ける。


「私、魅力ない?


元カノとはしてたのに私とはできない?


私じゃ駄目?


からかってるなら止めて!


ぅっくっ…ひっくっ…っく」


ガクは私を強く抱き締める。


「違う!違うよ、ノン。


ノンが大切過ぎて軽はずみに手を出せない。


お前は綺麗だから。


俺みたいに汚れた手で触れて良いのか、めちゃくちゃ戸惑う。


魅力無いんじゃ無い、有り過ぎるんだよ」

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