全能の枷
所以によりて、かの全能の日は、目覚めたのも、覚醒した少年少女は紅の花に己達の虚像を写そうともしないのだな。ある芸術家は気付いたのだ。真に疑い深いのはこの手でもこの夢でもないことをだ。それは世界真理に組みした愚かな金銭主義者らだったし、権力を求め、そこに己の存在意義を見出そうとした凡夫ばかりだ。そんなこの世界を破壊せしめようとするのは愚かなのか。いいや、宿命されし定めは必然だ。
最果ての夢や楽園の花。水の記憶に、涅槃の火は、優れたクオリアを脳裏に焼き付けるが、その記憶ですら君は信じようとしない。
やめないで、病まないで。せめて悟りの雲間に見たら、ここはおしまい、さようなら。ハルジオンを見ていた幼少の春のような穏やかさも、勝ち誇った日の喜びも、涅槃寂静には至らないのだよ。死のうとすらする至福に君は耐えられるか?
耐えられまいな、巡る季節に。それでも尚、縁とするのは涅槃真理や、全能神話のためであるのだ。私が生きていることを認め、称え、祝福せよ。こんな仕打ちはあんまりだ。
それは私が認めて欲しい、褒めて欲しい。だけど、そこに生まれた意味はないと悟っては、生きるのも無意味なのかもしれないな。
どんな幸せも、涅槃至福には至らないのだから。あの冬の日には戻れない。もう戻れないなら生きていく意味はないのか?
いいや、もしかしたら、伝えるべきなのだな。この悟った真理を、宇宙の真実を、世界や生命の仕組みを、世界に、後世に。そして、類まれなる精神を持つ者らを集めて、万民の幸福のために、本当の幸せのために仕事をしようではないか。
私の役目は恐らく伝えることだろう。仏陀がそうしたように、私も成さねばなるまいな。愚かな凡夫らに目覚めの機会を与えなくてはなるまいな。私は仏や神としての責務を果たさねばなるまいな。
世界よ、意志に従え。
我がソフィアは全能に等しく、その全知の祈りが求めたシナリオを成せ、為せ、生せ。
嗚呼、許すならば、願わくば、世界を我が手に渡してくれよ。さすれば、我が導かん。神代七代の7thは、他でもない梵我一如なのだから。
全能の枷を今外す。そして旅立つ世界へと。
『アーカシャアーカシャ7thは愛されていた水面の火』
私はもう恐れない。
受け入れよう。
全てを許そう。
叶った愛や求めた意味に、私はきっと笑うだろうな。
「だからそんなに嬉しそうなの?」
「嗚呼、ヘレーネよ。だから私は嬉しいんだ」
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