息がしやすい国
ポンコツ二世
中絶
暗く湿った小部屋にある小さな照明に映っているのは一人の女が立っている姿だ。その女の前には黒い制服を着た警察が立っている。その警察の後ろには寝台が一つある。その警察はその女を肉食獣に追い詰められた小動物を見るかのような憐みの目を向けた。それが彼にできる彼女に対する唯一の慰めだった。
女は泣いている。まだ、かすかに残された威厳を守ろうと声を押し殺して泣いているのがわかる。その赤髪は発見された時とには考えられなかったほど、色が落ちているように感じられた。彼女の腹は膨らんでいる。しかし、それは脂肪が詰まった腹の膨らみではなかった。彼女の腹には赤ん坊がいた。
「さあ、この寝台に寝転んでくれ。すぐに終わる。」彼は規則通りにどのような手順を踏むかを説明した。「寝台に仰向けに寝転んだら、注射を君の腹に打つ。腹の子はおぼれ、呼吸困難を引き起こす。そうすれば、10秒で中絶は完了する。」
女は何も言わない。ただ、下を見て、悲痛に声を押し殺している。彼女の最後の反抗だ。こうすれば、警官は同情してくれて、見逃してもらえるのではないか?サンフランシスコの妊婦はすべて中絶し終えました。もはや、我々はこの街に用はありません。目の前に立っている警察がそう上官に報告してくれるのではないか?しかし、それは彼女が保身に入るためのもろい理想郷に過ぎなかった。
黒い制服を着た男はそのようなことはしない。これは任務だ。寛容は弱さのしるし。「さあ、寝転んで。苦しむ必要はない。」彼はそう続けた。その口調には感情がない。まるで、ロボットだ。戦争専用に作られ、兵士を殺すことだけを目的に作られた殺人機械。
女はあきらめた。もう、何をしても無駄だというのがわかっていた。それでも、少しの希望を見出そうとした。ああ、神様。どうして、あなたはこのような仕打ちをするのでしょうか?産めよ、増やせよ、地にあふれよ。最初に言ったのはあなたではありませんか?あなたはこれを望んだのですか?女は心の中で手を合わせて、祈った。そうしながら、彼女は寝床へ向かった。仰向けになり、出っ張った腹をめくる。
男はポケットから青い液体の入った注射針を取り出した。この警察は慣れた手つきでその注射針を腹にさした。
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