ウィンドDE『悲恋短文』

01~05(もしかしたら07)

第45話

01:あの時握り潰したのは、何だったのか。




「…あの…先輩…」


少しでも見える景色を変えたいと思って、

分厚く古い書物に視線を落としている、大好きな先輩に声をかけてみたんです。


「どうした?」


読むのを中断し、少し離れた席に座っている少女に顔を向けた。


「あの…えと…

…なんでもないです…」


「?……そうか」


視線を再び書物に落とす。


私も視線を落とした。


“あの時握り潰したのは、何だったのか”


そんなの、私もわかっているの。


でも、それを言葉にしたら、先輩とこの距離が離れてしまうかもしれない。





本音を握り潰した私の中に、小さな何かが生まれた。


『アンタがやらないなら、私が言ってあげるわよ』


ニヤリと笑う、もう一人の……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る