第42話

09.いつも通り



私はいつも通りだ。


少女は目を開いた。


「…ヒルダ、どうだ」


「はい。

身体、精神共に回復しています。問題はないと思います」


そこには見上げるように私を見ている二人の姿があった。そして、遠巻きに見ている男も一人。


「では、ゼクティ。

カオスゲートの封印に行くぞ」


彼の言葉に反応して、私の体は動きだす。


「…はい、陛下」



私はいつも通りだ。


だが、なぜだ?


「ゼクティ!」


陛下と対峙した、男は私の名前を呼んだ。


なぜ、こいつの声を聞くと私は揺らぐのだ?


私がこいつと会ったのは、この間が初めてのはず。



「ゼクティ」



「ゼクティ」



ぼやけた視界に、二つの姿。


「ゼクティ!…どうして…」


のぞきこむように、私を見ていた。


一つは陛下。


もう一つは…。


私は、一つわかったことがある。


今までの私は、物事を深く考える必要がなかった。

というより、私は自分の意志というものがなかった。


そこから解き放たれて、


物事を深く考えるようになって、


…キリヤ、あなたが気になっていた。


……キリヤ。


作られた私に“感情”をくれた人。

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