第40話
07.交奏曲
☆
一度パーティで見て、その楽器から出てくる音色が、少年は好きになった。
ポロン…
真似して指を動かしてみるが、音は同じようには出ない。
少年は領内にある森の木の上に登って、こっそり弾いていた。落ちてしまわぬよう、枝がしっかりとしている場所に座って。
「竪琴ははじめてなのか?」
「え?」
下から声がして、思わず楽器を落としてしまいそうになった。
「…誰?」
「俺様はただの吟遊詩人さ。
それより、弾き方を教えてやるぜ?」
外見は兄さんと同じくらいの年に見えた。サラサラとしたブロンドの髪に蒼いバンダナを巻いて、腕には竪琴を抱えていた。
「え…」
答えるのがためらわれた。
旅人のようだが、もしもという不安もあったからだ。
しかし、男は片目を瞑ってウィンクをした。
「俺様の演奏なんて、なかなか聴けないぜ?」
竪琴に張られた弦を細く長い指で男は撫でた。
「う…うわぁ…!」
たった一回だけなのに、少年を驚かせるには十分だった。
「よ…よろしくお願いします!」
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「…しばらくその人に竪琴を教わったんだよ」
「へぇ」
情景を思い浮べながら語った少年は、その時よりも顔つきや背丈が変わっていた。
隣で話を聞いていた彼より少し年上の少年は微笑んで返した。
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★
「……ちょっと、今の話って」
「まさか…ねぇ?」
その話を聞いていたのは彼だけではなかったようだ。
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