第22話

10.永遠の魂



「いやぁ、17年ぶりだってのに…」


ハープを抱えた男は、目の前のベッドに座っている女性を上から下まで眺め見た。


「全然変わらないな」


彼女は魔女だ。

話によると1000年生きてるって話だが、外見は20代ぐらいにしか見えない。


女性は微笑んで、


「何言ってるの、クピード。あなただって、あまり…」


クピードと呼ばれた男は、エルフだ。

この種族も長命だが魔女ほどじゃない。


クピードは「いいや」と、首を振った。


「あの時の戦いで、弓を捨てたよ」


なぜとは問わず、女性は目を伏せた。


「…マキシマ」


17年前、戦いで戦友(とも)を失った。

彼女にとっても大事な男だったんだ。


「シオンがいるから」

「え?」

「彼が残してくれた、彼がいたという証。……それが、シオン」


ぎしり、ぎしり…


木で造られた階段が軋む音が聞こえた。振り向くと、鍋を持ってくる少年が上がってきたのだ。


「母さん、団長がお粥を作ってくれたんだ」


…そうか。


そうか、こいつが……。

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