06~10

第18話

06.生きると死ぬと



「ボクは…。

カイネル兄さんみたいな、強い力が欲しかったんだ」


元は人だったものが崩れ落ちる間際に言った。


(虫も殺せない、臆病なあなたが…)


魔力のこもったものを身につけ、人からかけ離れた体格、力を手に入れた。


(私に認めてほしくて…)


赤い絨毯に倒れた巨躯から黒い靄が溢れだし、元の姿に戻っていく。


「ガラハッド!!」


思わず叫び、駆け寄った。


「アイラ姉さん…」


抱き起こし、何度もその名前を呼ぶと、彼は弱々しく微笑んだ。


「私は……“力の強い人”が好きなんじゃない。

“優しい心をもつ人”が好き…………いつものあなたが好きだった」


溢れた涙が、ぱたぱたとガラハッドの頬に落ちて、流れた。


「アイラ姉さん……泣かないでよ。ボクは笑っている姉さんの顔が好きなんだ」


「ガラハッド…」


「…そうか、そうだったんだ。ボクはバカだな…」


あははと笑って、ガラハッドは瞳はゆっくり閉じていった。

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