ティアーズDE『神秘的10題以下A』

01~05

第13話

01.鏡の中



ボクが居候している『うたう勇者亭』の一階と二階の間にある二枚の鏡は、普通の姿を映す鏡じゃないらしいんだ。


ボクはその内の一枚の鏡に掛かっている布を外した。


(なんだ、普通じゃないか)


鏡は少年の姿を、ありのまま映していた。


拍子抜けして、ふぅとため息をついて、鏡に片手を置いて寄りかかる。


……と。


鏡が、水溜まりに小石が落ちたときみたいに歪んだ。

それに吸い込まれるように、ボクは鏡の中に入ってしまった。


…ピオスさんが言ってたっけ。


一瞬焦ったものの、意外と冷静に考えていた。


この鏡は、今いる世界に似ているところに繋がっているんだって。


どんなところだろう。


不安もあったけれど、興味のほうが強かった。


今までボクが戦ってきた記憶があるという、鏡の中の世界に―――。

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