第87話

CMなんかもやってるし、この辺からだと電車で行けちゃう距離だから、開園したら絶対一度は行ってみたいなって思ってはいたけど。


──待って、今その話題を持ち出すって、まさか……。


「実はあそこは万亀グループ社長──幸右様のお父上の肝入りで作られたテーマパークでして。

一日くらい、自由に使ってもいいというお話でございます」


その内容とは裏腹に、ごくごく軽いざっくりとした言葉で言ってくる。


「一日くらい自由に使ってもいいって……。

まさか貸切って事ですか?

開園前の、テーマパークを?」


確かに特別な芸能人とか偉い人とか、はたまたモニターみたいのに選ばれた人達がそういう風に開園前のテーマパークに招待されるっていうのは聞いた事ある……けど、それとはまったく話が違うんですけど?


頭がクラクラする様な話だ。


私の問いかけに猪熊さんが苦笑混じりの微笑みのまま「ええ」とはっきりと返してくる。


「幸右様も社長ももう完全にその気です。

出来れば瑠衣様にはご参加いただきたい、と思うのですが」


言ってくる。


私は困った顔でそれに応じた。


そーして……不本意ながら、万亀の顔を思い出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る