第25話

体育の授業とか遊びとかで軽くやってたって雰囲気じゃなく──それこそ冬馬とかバスケ部の人達が出す様な……ううん、もしかしたらそれ以上なのかもっていう様なパス。


冬馬がパシリとそのパスを受け取って──口をへの字に曲げて、ジロリとナキリを睨む。


ナキリがそれとは対照的に、ニッコリ笑った。


「先輩が、待ってるみたいだよ」


言う。


冬馬はナキリを睨んでたけど、


「おい、トーマ!!」


先輩らしき人が再び声を上げたんで、仕方なくって感じでボールを手に、戻っていった。


もっとも、最後にナキリをもうひと睨みすることは忘れなかったみたいだけど。


私は思わず大きく息をつく。


「ごめんね、あいつ愛想がないのよ」


「う〜ん、愛想がないっていうか。

……まぁ、俺は気にしてないから大丈夫だよ」


そんな感じで返してくる。


はぁ。


まったくあいつは。


初対面の人間にいきなり睨みを利かすとか、幼馴染みとして恥ずかしい限りだわ。


思いながらも息をついて自分の腕時計を見る。


今の時刻、8時10分。


案外いい時間みたい。

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