第13話

正直このままじゃおちおち眠れもしねぇ。


なにかいい手は…なんて考えながら、俺はさっき撒いたばかりのスーツ男たちの気配に気づき、慌ててその辺の廃墟の中へ身を隠す。


この辺りは旧市街ってだけあって人通りもなけりゃ家も建物も壊れかかってる。


隠れる場所はいくらでもあった。


俺は、そーっとすぐ近くにあった民家らしい建物の戸に手をかけ、ほんのちょっと開けてさっと中へ滑り込んだ。


すぐに、戸を閉める。


戸が少しはきしむかと思ったが、案外何の音も出さなかった。


ラッキー、と思いつつ俺は、玄関口から部屋の中へ、そうっと足を踏み入れる。


そうしながら、妙なことに気がついた。


外側の壊れかかった、打ち捨てられた民家の外見とは裏腹に、中は案外きれいなもんだ。


さすがにほこりは床にも家具にも積もっちゃいるが、どこも傷んじゃいねぇし。


今現在もここで誰かが生活しててもおかしくねぇくらいだ。


現に、玄関を入ってすぐ、キッチンのコンロの上には鍋が。


テーブルの上には「これから夕食ですよ」と言わんばかりにナイフやフォーク、干からびた何かが乗った皿。


ワイングラスの中には液体まで入ってやがる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る