第8話

ぞくり、とミーシャの胸の内に不安が押し寄せる。


この姿はまるで、これからのミーシャの姿を予見しているかのようだった。


悲鳴を上げそうになるのを押さえて──ミーシャは静かに、問う。


「──あなたは……一体、どこの誰だったの……?」


答えがないことは分かりきっていた。


けれど、パニックを押さえる手助けにはなった。


「…………」


無論、答えはない。


けれど。


かたん、と音を立てて、何かが地面に落ちた。


ミーシャは、そっと屈んで、その“何か”を拾い上げる。


それは、錆び付いた何かの鍵のようなものだった。


鍵とは言っても、普通の形状の鍵ではない。


ミーシャが見たこともないような、何かの鍵だ。


鍵にはキーチェーンがついていて、先に平べったい金属製のタグのようなものがついていた。


「──『ダルク・カルト』……?」


金属に掘られた文字を、指先だけで辿って識別する。


「ダルク──」


男の名だろうか。


なぜこの人は、こんな所で力尽きることになってしまったのだろう。


ミーシャは──そっとその鍵を骸骨の横に戻し、手を合わせると、剣を抱えたまま再び歩き始めた。


「──名前だけ、もらわせてね」


そんな言葉を、後ろの骸骨にかけながら──。

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