第74話





「……。」




ぐっと鞄を持つ手に力が入る。





息を詰めて、そのまま静かに玄関へと歩みを進めた。




ゆっくりと靴を履く。





ーーーここまでは順調だ。




「……。」



大丈夫、このまま誰にも合わない。



そっと玄関の扉に触れ、静かに押し開けようとした。



その時。



「莉茉…?」

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