第23話




「…だったらとっとと消えろ。」




ただ、淡々とした声。




なのに、他者を動かしてしまう。




―――その声が、私は怖いと心底思ったんだ。





「ひっ!っ、本当にすみませんでした!!」




頭を深々と下げたナンパ男は、私を見る事なく脱兎の如くその場を走り出す。



「……。」



そんなあっさりと逃げ出した彼を、私はただ唖然と見送るしかなくて。



…………助かった?




「…大丈夫か?」



「っっ、」



はっと天野さん見上げれば、彼はじっと、その漆黒の瞳で私を見下ろしていた。

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